外国人を採用したとしても、基本的にはどのような仕事でも担当させられる訳ではありません。
在留資格は、法律で活動できる範囲が決められていて、その範囲を超えて就労するようなことがあれば、資格外活動違反となり、不法就労扱いとなります。
不法就労扱いになれば、外国人本人はもちろん、企業側も刑罰の対象となります。
しかし、ある程度の事業規模のある会社の場合、初期研修・実務研修としてその会社の様々な業務を経験させていく研修を行うことが一般的ではないでしょうか。
外国人従業員は、このような実務研修を受けることもできないのでしょうか。
この記事では、そうした外国人従業員の実務研修の考え方について解説をしております。
- 外国人従業員に対して、入社後研修を実施している企業様
- 外国人従業員を含めて、社員のキャリアステップの構築を検討している企業様
技術・人文知識・国際業務の活動範囲の確認
外国人が在留資格をもって日本に在留するためには、その在留資格の範囲内の活動を行う必要があります。
就労系在留資格の中でも最も一般的な「技術・人文知識・国際業務」の在留資格は、その在留資格該当性として次のように定めております。
本邦の公私の機関との契約に基づいて行う理学、工学その他の自然科学の分野もしくは法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野に属する技術もしくは知識を要する業務または外国の文化に基盤を有する思考もしくは感受性を必要とする業務に従事する活動
これは、分かりやすく言えば大学理系・文系卒業レベルの専門的な知識や技術が必要な活動や、外国人特有の思考や感受性が必要な活動をすることができるのが、技術・人文知識・国際業務の在留資格だと書いてあります。
裏を返すと、専門的な知識を必要としない業務、単純作業を繰り返すような業務、あるいは現業的な業務。
いわゆるブルーワーカー的な活動については技術・人文知識・国際業務の在留資格には該当しないとされています。
技術・人文知識・国際業務の在留資格に関する説明は、こちらの記事もご参照ください。
外国人従業員の初期研修・実務研修の考え方
まず、結論
日本では、特に新卒採用をしているようなところでは、入社後の新入社員に対して、初期研修を実施している企業も多いと思います。
当然、会社としては、採用した従業員について日本人か外国人かは関係なく、そうした研修制度の中で多様で幅広い能力や知識を身に付けてもらい、自社の発展に貢献してもらいたいと思うはずです。
先に解説したように外国人従業員は、在留資格によって活動できる範囲が定められており、技術・人文知識・国際業務の在留資格の場合、工場ラインでの勤務などは通常認められません。
しかし、出入国在留管理局は、このような技術・人文知識・国際業務の在留資格に該当しない活動であっても、日本人の大卒社員等に対しても同様に行われる実務研修の一環で、外国人の在留期間の全体の中で、その活動が大半を占めるようなものでないときは、技術・人文知識・国際業務の在留資格内でそのような活動を認めることとしています。
「在留期間の全体の中で」
実務研修が認められるための条件の1つには、「外国人の在留期間の全体の中で、技術・人文知識・国際業務の在留資格に該当しない活動が大半を占めないとき」とあります。
この在留期間の全体の中で、というのは、その外国人に対して許可されている現在の在留期間という意味ではなく、その外国人が今後日本国内で活動することが想定される技術・人文知識・国際業務の在留資格をもって在留する期間全体を意味します。
たとえば、雇用契約上は期間の定めのない無期雇用契約となっていて、相当長期間、日本国内で技術・人文知識・国際業務の在留資格に該当する活動をすることが予定されていれば、在留期間「1年」を決定されたとしても、その1年間すべてを実務研修に費やして、それ以降を技術・人文知識・国際業務の在留資格に該当する活動へと移行する、ということも考えられます。
他方で、雇用契約上の契約期間が3年間となっていて、契約の更新も予定されていない場合で、実務研修を2年間行うということは認められません。
この在留期間の全体の判断については、在留資格の申請時に受け入れ機関(企業)が提出する雇用契約書や研修計画に関する説明資料などを踏まえて判断されることになります。
研修計画等の相当性
実務研修が認められるかどうかの判断にあたって、研修計画の相当性・妥当性がもう1つの判断基準となります。
研修計画の相当性・妥当性を判断するためには、実務研修を行う企業の日本人社員を含めた入社後のキャリアステップと、各ステップごとに従事する具体的な職務内容等を申請時の参考資料として提出して、積極的に証明していく必要があります。
実務研修が外国人社員だけに限定されていたり、研修の内容が日本人と外国人で差があるようなものについては、たとえば日本語研修を目的とした研修のような、合理的な理由がない限りは実務研修に従事することについて、相当性・妥当性があるとはいえません。
入社後研修以外の実務研修の場合
入社後の研修以外にも、キャリアステップの一環として中途中途で実務研修を実施する企業もあるかと思います。
このような、契約期間中に行われる実務研修についても、考え方はこれまで解説してきたものと同様です。
その外国人が日本で活動する期間全体の中でどのくらいの割合を占めるのか、そして研修計画には相当性・妥当性があるのかという部分を、積極的に入管に対して説明していく必要があります。
実務研修に関する在留期間の決定について
実務研修期間が設定されている場合、実務研修を適切に修了した後に、技術・人文知識・国際業務の在留資格に該当する活動に適切に移行していることを確認するため、在留資格を決定するときの在留期間は基本的に「1年」を決定することになります。
在留期間更新時に、当初の研修予定期間を超えてさらに実務研修に従事する場合には、なぜさらに研修が必要なのかという理由を説明する必要がありますが、合理的な理由がないと判断されてしまった場合には、在留期間の更新は認められません。
行政書士TLA観光法務オフィスでは、在留資格手続の専門事務所として、過去の知見からお客様の状況に合わせた様々なアドバイスをすることが可能です。
専門性の高い外国人従業員の中途採用だけでなく、日本の大学等を卒業する外国人を新卒採用するような場合には、最終的には技術・人文知識・国際業務の在留資格に該当する活動をしてもらう場合であっても、当初の実務研修では技術・人文知識・国際業務の在留資格に該当しない活動にも従事してもらう必要性というのはどこかで出てくると思います。
その際、積極的な証明ができなかったことで、在留資格の申請が不許可になってしまった、ということにならないように、申請前には入念に資料の準備を進めていく必要があります。
不許可になることが無いように、気になることやご不安なことがございましたら、在留資格手続の専門家にご相談いただければと思います。
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