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就労系在留資格の基本 技術・人文知識・国際業務の解説

就労系在留資格の基本 技術・人文知識・国際業務の解説

在留資格「技術・人文知識・国際業務」は、就労活動をすることができる就労系の在留資格の中でも、一般的な在留資格といえます。
2020年末時点の、日本国内における中長期在留者の人数は280万人を超えていますが、そのうちの就労系在留資格でみていくと、1位が技能実習生で約37万人、2位が技術・人文知識・国際業務で約28万人となっています。
つまり、中長期在留者のうち1割は技術・人文知識・国際業務の在留資格をもって滞在している人ということになります。

実際に、企業の方から外国人採用のご相談をいただくと、ほとんどがこの技術・人文知識・国際業務に該当する業務を行うこととなり、適切な手続を進めていくケースです。
そこで、この記事では、就労系資格の基本である技術・人文知識・国際業務について、どのような活動をすることができ、どのような条件に当てはまる必要があるのかを、詳細に解説していきます。


目次

技術・人文知識・国際業務が日本国内で行うことのできる活動

在留資格「技術・人文知識・国際業務」は就労資格の中でも一般的な資格であると言われています。
かつては、大学理系レベルの自然科学分野に属する知識や技術が必要な業務を行うことができる「技術」の在留資格と、大学文系レベルの人文科学分野に属する知識や技術が必要な業務と、外国人特有の感受性などが必要な業務を行うことができる「人文知識・国際業務」という2つの在留資格に分かれていたものが、2014年の入管法改正に伴い、2015年4月から「技術・人文知識・国際業務」として1つの在留資格に統合されました。

以前は、「技術」の人は「人文知識・国際業務」に関する業務を行う場合には在留資格の変更手続が必要でしたが、2つの在留資格が統合したことによって、在留資格の変更手続をすることなく、分野横断的に業務に従事することができるようになりました。

具体的な許可事例

入管法上の細かい判定基準や考え方については後述するとして、ここでは、どういった業務が技術・人文知識・国際業務の活動として認められているのかを、出入国在留管理庁が公開している許可事例をベースにしていくつか見ていきたいと思います。

許可事例その1

工学部を卒業した人が、電機製品の製造を業務内容とする企業に就職して、技術開発業務に従事する事例。

許可事例その2

経済学部を卒業した人が、ソフトウェア開発会社に就職して、システムエンジニアとして稼働する事例。

許可事例その3

経営学部を卒業した人が、コンピューター関連サービスを業務内容とする企業に就職して、通訳・翻訳に関する業務に従事する事例。

不許可になった事例

許可事例とは別に、不許可になった事例についても、出入国在留管理庁が公開している事例をベースにお伝えします。

不許可事例その1

教育学部を卒業した人が、弁当の製造・販売業務を行っている企業に就職して、現場作業員として弁当の箱詰めに従事するとして申請があった事例。

不許可事例その2

工学部を卒業した人が、コンピューター関連サービスを業務内容とする企業に就職して、月額13万円の報酬を受けてエンジニア業務に従事するとして申請があったが、同種の業務に従事する新卒の日本人の報酬が月額18万円であることが判明した事例。

技術・人文知識・国際業務の在留資格該当性

出入国在留管理及び難民認定法では、外国籍人材が取得可能な在留資格を、別表という形で一覧にしています。
この別表は第1と第2に分かれていて、それぞれ別表の上欄に在留資格の名称が、下欄にその在留資格が行うことのできる活動等について記載されています。

別表下欄の、在留資格が行うことのできる活動のことを在留資格該当性と呼びます。
在留資格を取得するためには、最低限、外国籍人材が日本国内で行おうとしている活動が、在留資格該当性に当てはまっていることが重要です(入管法第7条第1項第2号前段/在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドライン第1)。

概要

技術・人文知識・国際業務の在留資格該当性は、以下のとおりです。

本邦の公私の機関との契約に基づいて行う理学、工学その他の自然科学の分野もしくは法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野に属する技術もしくは知識を要する業務または外国の文化に基盤を有する思考もしくは感受性を必要とする業務に従事する活動(別表1の1の表の教授の項、芸術の項および報道の項の下欄に掲げる活動ならびに別表1の2表の経営・管理の項から教育の項までおよび企業内転勤の項から興行の項までの下欄に掲げる活動を除く。)

条文をそのまま読もうとすると読みにくさがありますが、在留資格該当性を細かく分解するとさらに以下のようになります。

本邦の公私の機関との
契約に基づいて
③以下のいずれかの業務に従事する活動で
(1)自然科学の分野に属する技術もしくは知識を要する業務
(2)人文科学の分野に属する技術もしくは知識を要する業務
(3)外国の文化に基盤を有する思考もしくは感受性を必要とする業務
④「教授」「芸術」「報道」「経営・管理」「法律・会計業務」「医療」「研究」「教育」「企業内転勤」「介護」「興行」の在留資格に該当する活動を除外する。

技術・人文知識・国際業務の在留資格は、その内情としては「技術」「人文知識」「国際業務」という3つの類型に分類できる業務を1つの在留資格としてまとめたものになっています。
上記③(1)の自然科学分野の技術や知識を必要とする業務に対応するものが「技術」、(2)の人文科学分野の技術や知識を必要とする業務に対応するものが「人文知識」、そして(3)の外国の文化に基盤を有する思考や感受性を必要とする業務に対応するものが「国際業務」に該当します。

実際の在留審査の現場では、外国籍人材が従事する活動内容が、③(1)~(3)のどれかに当てはまっていれば、技術・人文知識・国際業務としての在留資格を取得できることになります。
これは、たとえば技術職としての技術・人文知識・国際業務を取得した場合で、配置転換等で人文知識や国際業務に該当する業務を行うことになったとしても、他の入管法上の条件さえクリアしていれば、在留資格の変更手続きなどは不要であることを意味しています。

本邦の公私の機関

本邦とは日本国内という意味で捉えて問題ありません。
本邦の公私の機関には、国、地方公共団体、独立行政法人、会社、その他の法人だけでなく、任意団体も含まれます。
また、日本国内に事業所や事務所を構える外国の国、地方公共団体(地方政府も含む)、外国法人等も含まれます。
そしてさらに、日本国内に事業所、事務所等を有する個人も本邦の公私の機関に含まれます。

契約に基づいて

契約には、雇用契約のほか、委任契約、業務委託契約、嘱託契約等も含まれます。
ただし、特定の機関との継続的な契約である必要があります(複数の機関との契約でもOKです)。
特定の機関との継続的契約ではない場合は、在留資格「経営・管理」の該当性を検討する必要があります。

契約の当事者になりえるのは、自然人(いわゆる「人」)や法人格をもつ団体に限られています。
したがって、たとえば、ある株式会社の事業所の所長が契約書に署名捺印をして契約を締結したとしても、その所長が会社を代表して契約を締結しているのであれば、その株式会社が契約の主体となります。

外国籍人材が契約に基づいて行う活動は、適法に行われるものである必要があります。
加えて、在留活動が継続して行われることが見込まれる必要もあります。
労働契約を締結する場合は、労働基準法の規定に従って、労働条件を書面で明示する必要があります。

自然科学もしくは人文科学の分野に属する技術もしくは知識を要する業務

学術上の素養を背景とする一定水準以上の業務のことを示すもので、いわゆる大学の理系・文系科目を専攻して習得した一定の水準以上の専門的知識を必要とする業務が該当します。
単に経験を積んだことによって蓄積している知識だけでは足りず、学問的・体系的な知識を必要とするものでなければなりません。

外国の文化に基盤を有する思考もしくは感受性を必要とする業務

外国人特有の感性等、日本で生まれ日本で育ってきた一般的な日本人では代替することのできない思考方法や感受性を必要とする業務のことを意味しています。
外国の社会、歴史・伝統の中で培われてきた発想や感覚をベースにした一定水準以上の専門的な能力であることが求められます。

在留資格に該当する活動かどうかの判断

外国籍人材が行おうとする活動が技術・人文知識・国際業務に該当するかどうかの判断については、その外国籍人材の在留期間中の活動を全体的に見て、行われています。
なので、たとえば技術・人文知識・国際業務に該当する活動は確かにするものの、在留期間全体でみればほんの短期間であるような場合には、全体的な活動としては技術・人文知識・国際業務に該当しないという風に判断されます。

一方で、行おうとしている活動の中に技術・人文知識・国際業務に該当しないものが含まれていたとしても、たとえばそれが入社時に日本人も含めて必ず行われる研修の一環で、将来的に技術・人文知識・国際業務に該当する業務を行う上で必ず必要になるもののようなときには、在留活動の期間全体で判断したときに、技術・人文知識・国際業務に該当する可能性があります。

この業務研修の考え方については、改めて別に記事を執筆予定です。

技術・人文知識・国際業務の上陸許可基準

概要

上陸許可基準は、一部の在留資格に関して、在留資格該当性に適合する外国籍人材の中から、さらに日本の産業や国民生活に与える影響などを総合的に加味して、受け入れるべき人材をより限定的にするために設けられている基準です。

一部の在留資格の上陸許可基準は、出入国管理及び難民認定法第7条第1項第2号の基準を定める省令という、法務省令で定められています。
このままだと非常に長いので、基準省令上陸許可基準省令と呼ぶことがあります。

基準省令では、技術・人文知識・国際業務の上陸許可基準について以下のように定めています。

申請人が次のいずれにも該当していること。ただし、申請人が、外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法第58条の2に規定する国際仲裁事件の手続等および国際調停事件の手続についての代理に係る業務に従事しようとする場合は、この限りでない。
①申請人が自然科学または人文科学の分野に属する技術または知識を必要とする業務に従事しようとする場合は、従事しようとする業務について、次のいずれかに該当し、これに必要な技術または知識を修得していること。ただし、申請人が情報処理に関する技術または知識を要する業務に従事しようとする場合で、法務大臣が告示をもって定める情報処理技術に関する試験に合格しまたは法務大臣が告示をもって定める情報処理技術に関する資格を有しているときは、この限りでない。
イ 当該技術若しくは知識に関連する科目を専攻して大学を卒業し、またはこれと同等以上の教育を受けたこと。
ロ 当該技術または知識に関連する科目を専攻して本邦の専修学校の専門課程を修了(当該修了に関し法務大臣が告示をもって定める要件に該当する場合に限る。)したこと。
ハ 10年以上の実務経験(大学、高等専門学校、高等学校、中等教育学校の後期課程または専修学校の専門課程において当該技術または知識に関連する科目を専攻した期間を含む。)を有すること。
②申請人が外国の文化に基盤を有する思考または感受性を必要とする業務に従事しようとする場合は、次のいずれにも該当していること。
イ 翻訳、通訳、語学の指導、広報、宣伝または海外取引業務、服飾もしくは室内装飾に係るデザイン、商品開発その他これらに類似する業務に従事すること。
ロ 従事しようとする業務に関連する業務について3年以上の実務経験を有すること。ただし、大学を卒業した者が翻訳、通訳または語学の指導に係る業務に従事する場合は、この限りでない。
日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること。

ご覧の通り、非常に長くて分かりにくく書かれています。
もう少しかみ砕くと次のようになります。

以下の①②③すべてに該当すること。
自然科学もしくは人文科学の分野に属する技術もしくは知識を要する業務に従事する場合は、(1)~(3)のどれかに該当すること。
(1)自然科学・人文科学の分野に関する技術・知識に関連する科目を専攻して大学を卒業するか、それと同等以上の教育を受けている。
(2)自然科学・人文科学の分野に関する技術・知識に関連する科目を専攻して専門士の学位を取得できる日本の専門学校を修了したこと。
(3)10年以上の実務経験があること
外国の文化に基盤を有する思考または感受性を必要とする業務に従事しようとする場合は、(1)と(2)両方に該当すること。
(1)翻訳、通訳等の一定の業務に従事すること
(2)従事しようとする業務に関連する3年以上の実務経験があること。
③外国籍人材が受け取る報酬額は、日本人と同等以上であること。

①~③のすべてに該当することとなっていますが、①と②は場合分けなので、外国籍人材が行おうとしている活動が①に該当している場合は①と③に該当していればよく、同じく行おうとしている活動が②に該当している場合は②と③に該当していれば十分です。

自然科学もしくは人文科学の分野に属する技術もしくは知識を要する業務に従事する場合

いわゆる「技術」「人文知識」に該当する業務に従事する場合は、

(1)業務と関連した科目を専攻して大学卒業
(2)業務と関連した科目を専攻して日本の専門学校を卒業
(3)10年以上の実務経験

のいずれかに該当していることが必要です。
裏を返すと、最終学歴が中学や高校卒業で、10年以上の実務経験も証明できない場合には、技術・人文知識に関する在留資格の取得はできないということになります。

専攻科目との関連性について

自然科学や人文科学に関連する業務を行おうとする場合、実務経験ルートの他には、大学卒業か専門学校卒業という学歴ルートを利用することになります。
このとき、大学卒業者も専門学校卒業者も、どちらについても関連する科目を専攻して卒業していることが求められています。

この業務と専攻科目の関連性については、大学卒業者と専門学校卒業者で判断が異なります。

大学卒業者の場合は、行おうとする業務と専攻科目の関連性は、より緩やかに判断されます。
つまり、IT系の会社に就職してSEとして働くとなった場合に、大学文系の文学部を卒業しているからといって、在留資格申請が許可されないということは無いということです。
これは、大学という機関が、学術の中心として広く知識を授け、深く専門の学芸を教授研究することが目的となっていることから、その幅広い知識を身に付けて専門性を掘り下げるという性質から、柔軟に判断されているところです。

一方、専門学校卒業者の場合は、行おうとする業務と専門科目の関連性は、厳格に判断されます。
これは、先ほどのSEの例でいうと、専門学校時代にプログラミングやWebデザイン等の、システム開発に関係する科目の履修が無ければ、在留資格申請をしても許可されない可能性が高いということを意味しています。
専門学校の場合は、その特性として職業や実生活に必要な能力を育成して、教養の向上を図ることを目的としているため、より現場に即した専門的な知識を学んでいるということで厳格に判断されているところです。

また、専門学校卒業ルートの場合は、専門士・高度専門士を取得できる専門学校の専門課程である必要があります。
専門学校の中には、こうした専門士を取得できない課程もあるので、注意が必要です。

10年以上の実務経験

実務経験ルートの場合は、この実務経験にどこまで含めるかが問題となります。
この実務経験には、大学等で関連科目を専攻した期間も含めることができるとされています。
また、技術・人文知識・国際業務に該当する業務を10年経験しているところまでは求められず、関連性のある業務に従事した期間も実務経験としてカウントしてよいことになっています。

外国の文化に基盤を有する思考もしくは感受性を必要とする業務に従事する場合

国際業務に該当する業務に従事しようとする場合は、

(1)一定の業務に従事すること
(2)3年以上の実務経験があること

という2つを同時に満たす必要があります。

一定の業務に従事すること

基準省令では、国際業務に該当する業務内容として、翻訳、通訳、語学の指導、広報、宣伝または海外取引業務、服飾もしくは室内装飾に係るデザイン、商品開発その他これらに類似する業務を示しています。
このまま読むと少しわかりにくいので、もう少しだけかみ砕くと次のようになります。

(ア)翻訳、通訳、語学の指導、広報、宣伝業務
(イ)海外取引業務、服飾・室内装飾のデザイン、商品開発
(ウ)(イ)に類似する業務

見ていただくと分かる通り、(ア)は業務の内容について限定的に示されています。
(イ)も限定的に示されていますが、類似する業務であれば、国際業務の分野に該当する可能性を残しています。

3年以上の実務経験があること

実務経験は、従事しようとする業務と同じ業務である必要までは無く、関連する業務についての経験であればOKです。
また、大学卒業者翻訳、通訳、語学の指導に従事する場合は、3年の実務経験は免除されます。

技術・人文知識と国際業務が競合する場合

これはどういうことかというと、国際業務に関する活動(通訳、翻訳、海外取引業務等)に従事する場合であっても、大学等でこうした業務を行うために必要な科目を専攻して卒業したようなときには、「自然科学もしくは人文科学の分野に属する技術もしくは知識を要する業務に従事する場合」としての上陸許可基準が適用されることとなります。

もう少し具体的な例を挙げると、留学生として大学で言語学を学んだ人が、大学卒業後にその学んだ言語を活用して通訳・翻訳業務に従事するような場合は、通訳・翻訳業務であっても「人文知識」としての業務に従事するということになります。

日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬

その仕事に従事しようとしている外国籍人材と同じ条件で日本人が従事することになった場合に、その日本人が受け取る報酬と同程度の報酬が支払われなければなりません。
実務的には、審査上、会社の賃金規定などの提出を求められることもあります。

また、在留審査上の報酬の定義は「一定の役務の給付の対価として与えられる反対給付」となっており、通勤手当や扶養手当、住宅手当のような実費を補填するような性質のものについては、報酬に含まれないことに注意が必要です。


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日本の在留資格制度は複雑で理解が難しい制度です。
しかし、正しい知識を理解することで、申請時に許可の出る確率が高くなるのも事実です。

技術・人文知識・国際業務の在留資格は、就労系在留資格の基本ともいえるものです。
それゆえ、多くの事業者の方が外国籍人材を採用する際に、検討する在留資格となります。
日本の在留資格制度は、活動内容が在留資格に該当するかどうかの判断が非常に重要です。
在留資格に該当しない活動は、どれだけ専門性が高くても認められません。

もし、在留資格のことでお悩みを抱えていらっしゃる場合は、ぜひ一度私どもにお話をお聞かせください。
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