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転職してすぐに在留期間更新許可申請をするときに気を付けること

転職してすぐに在留期間更新許可申請をするときに気を付けること

様々なお客様のご相談に乗っていてよく遭遇するのが、転職後に在留期間の更新申請をしたけど不許可になってしまった、というものです。
たとえば技術・人文知識・国際業務の在留資格を取得した後、転職をすると、当初の許可が出た際の前提条件であった、職務内容が変わることになります。

転職前と同じ仕事をやるよ、ということであっても、所属する会社が変われば厳密には職務の内容も変わります。
入管では、こうした転職のことを「事情変更あり」として、事情変更有の在留期間更新は、単純な更新案件ではなく、在留資格変更案件と類似のものとして、必要な書類を要求してきます。

今回は、転職してすぐに在留期間の更新許可申請をする際に入管が審査をしているポイントについて解説をして、入管制度の理解を深めていただきたいと思います。


目次

技術・人文知識・国際業務人材が転職するときに必要な手続

技術・人文知識・国際業務の在留資格を持った人が転職をして、転職先でも継続して技術・人文知識・国際業務の在留資格に該当する業務に従事する場合、在留期間の残りの期間がどれくらいかによって、対応すべき手続内容が変わります。
具体的には、在留期間の有効期限まで6か月以上の期間が残っているかどうかで判断します。

必ず実施する手続

まずは、どんなときでも必ずしなければいけない手続があります。
労働施策総合推進法に基づく届出と、入管法上の中長期在留者の受入れの届出については、外国籍人材を使用した会社側が行う手続きです。
手続が漏れていると、入管法の審査上マイナスに働くことがあるので、必ず忘れないようにしましょう。

労働施策総合推進法に基づく届出をする

労働施策総合推進法は、正式名称を労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律といいます。
かつては雇用対策法という名称だった法律が、2017年の法改正とともに名称を変えて現在の名前になりました。

この法律では、事業主は、新しく外国人を雇い入れた場合、または雇用している外国人が離職した場合には、所定事項をハローワークに届け出ることとされています(労働施策総合推進法第28条第1項、労働施策総合推進法施行規則第12条第1項)。
届出の対象となる外国人は、外交・公用の在留資格の保持者と特別在留者以外のすべての外国人が含まれます。

所属機関による届出

技術・人文知識・国際業務の人材を雇用した場合あるいは外国人が離職した場合、中長期在留者受入れに関する届出を提出します(出入国管理及び難民認定法第19条の17)。
ただし、労働施策総合推進法に基づく届出をしている場合には、入管法上の届出は免除されることになっています。

所属機関等に関する届出

外国人側が行う手続きとしては、所属機関等に関する届出があります。
具体的には、技術・人文知識・国際業務の在留資格を持つ外国人に関して、契約の相手方である本邦の公私の機関の名称・所在地の変更や消滅、あるいは契約の終了・新しい契約締結をしたときには、契約機関に関する届出を14日以内に提出する必要があります。

在留期間の有効期限まで6か月以上の期間が残っている場合の手続

就労資格証明書の交付申請をする

転職した段階で、在留期間の有効期限が6か月以上残っている場合は、就労資格証明書の交付申請をします。
就労資格証明書は、証明書の交付申請で申告する活動内容が、現在の在留資格の範囲内で行うことができることを証明してもらうものです。

転職に際して、転職先で行う活動が技術・人文知識・国際業務の在留資格の範囲内であることが証明できれば、大手を振って転職先でも勤務できますし、就労資格証明書の交付を受けなかった場合と比べると、次回更新時に必要な書類の種類が少なくなります。

在留期間の有効期限まで6か月を切っている

在留期間更新許可申請をする

就労資格証明書は、職場を変更したあとに交付申請した場合、申請してから交付されるまで最長で3か月程度かかります。

在留期間の有効期限が6か月を切っている場合、就労資格証明書が交付されるころには在留期間の更新申請をすることが可能になっており、このような場合には就労資格証明書の交付を受けずに、そのまま在留期間更新許可申請をします。

ただし、通常の在留期間更新許可申請とは異なり、前回在留資格の決定を受けたときからの「事情変更あり」として扱われます。
具体的には、在留期間更新許可申請の中で、転職先で行う活動内容についての在留資格該当性などが審査されるため、実質的には技術・人文知識・国際業務への在留資格変更許可申請と同じような手続をすることになります。

転職直後の在留期間更新許可申請で審査されるポイント

就労資格証明書の交付を受けない、転職直後にする在留期間更新許可申請では、在留資格該当性と在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるかどうかについて、審査が行われます。

在留期間の更新許可は、在留資格の変更許可と併せて「相当の理由がある」ときに限って許可を受けることができると定められており、審査をする行政側に一定の裁量が認められています。
とはいえ、好き勝手に自由に許可不許可を決めることができるということではなく、予見可能性を守るために、一定の基準をガイドラインという形で示しています。

以下では、そのガイドラインに言及されている審査のポイントに沿って、解説を加えていきます。
ガイドラインの原文を確認したい場合は、こちらをクリックしてください。

在留資格該当性

各在留資格の在留資格該当性については、入管法の別表下欄に記載されています。
技術・人文知識・国際業務の在留資格該当性については、次のように記載されています。

本邦の公私の機関との契約に基づいて行う理学、工学その他の自然科学の分野もしくは法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野に属する技術もしくは知識を要する業務または外国の文化に基盤を有する思考もしくは感受性を必要とする業務に従事する活動(別表1の1の表の教授の項、芸術の項および報道の項の下欄に掲げる活動ならびに別表1の2表の経営・管理の項から教育の項までおよび企業内転勤の項から興行の項までの下欄に掲げる活動を除く。)

法律に書かれた内容をそのまま読むと分かりにくいため、かみ砕くとさらに以下のようにまとめることができます。

本邦の公私の機関との
契約に基づいて
③以下のいずれかの業務に従事する活動で
(1)自然科学の分野に属する技術もしくは知識を要する業務
(2)人文科学の分野に属する技術もしくは知識を要する業務
(3)外国の文化に基盤を有する思考もしくは感受性を必要とする業務
④「教授」「芸術」「報道」「経営・管理」「法律・会計業務」「医療」「研究」「教育」「企業内転勤」「介護」「興行」の在留資格に該当する活動を除外する。

つまり、大学理系・文系卒業レベルのある程度専門的な知識などが要求される業務や、日本で生まれ育った一般的な日本人では代替できないような思考方法や感受性が必要な業務を、契約に基づいて行うことが技術・人文知識・国際業務の在留資格該当性とされています。

過去に技術・人文知識・国際業務の在留資格が決定されたときから職場も業務内容も変わっていない場合の在留期間更新許可申請については、この在留資格該当性は満たしているものとして扱われますが、転職直後の在留期間更新許可申請では、在留資格該当性についても改めて審査の対象となります。

在留資格該当性の詳細な解説をこちらをご参照ください。

相当の理由があること

上陸許可基準に原則適合していること

上陸許可基準はその名前の通り、通常は外国人が海外からやってきて、新たに日本の領土に上陸しようとするときの審査項目として使用される基準です。

上陸の為の基準なので、在留期間の更新許可には関係ないように思えますが、ガイドラインでは原則として上陸許可基準も満たしていることを要求しています。
なので、入管の考え方としては「相当の理由がある」の1つとして、上陸許可基準に適合しているかどうかも審査をしているということになります。

上陸許可基準は、独立した省令の中で、一部の在留資格について定めています。
技術・人文知識・国際業務の上陸許可基準は次のとおりです。

申請人が次のいずれにも該当していること。ただし、申請人が、外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法第58条の2に規定する国際仲裁事件の手続等および国際調停事件の手続についての代理に係る業務に従事しようとする場合は、この限りでない。
①申請人が自然科学または人文科学の分野に属する技術または知識を必要とする業務に従事しようとする場合は、従事しようとする業務について、次のいずれかに該当し、これに必要な技術または知識を修得していること。ただし、申請人が情報処理に関する技術または知識を要する業務に従事しようとする場合で、法務大臣が告示をもって定める情報処理技術に関する試験に合格しまたは法務大臣が告示をもって定める情報処理技術に関する資格を有しているときは、この限りでない。
イ 当該技術若しくは知識に関連する科目を専攻して大学を卒業し、またはこれと同等以上の教育を受けたこと。
ロ 当該技術または知識に関連する科目を専攻して本邦の専修学校の専門課程を修了(当該修了に関し法務大臣が告示をもって定める要件に該当する場合に限る。)したこと。
ハ 10年以上の実務経験(大学、高等専門学校、高等学校、中等教育学校の後期課程または専修学校の専門課程において当該技術または知識に関連する科目を専攻した期間を含む。)を有すること。
②申請人が外国の文化に基盤を有する思考または感受性を必要とする業務に従事しようとする場合は、次のいずれにも該当していること。
イ 翻訳、通訳、語学の指導、広報、宣伝または海外取引業務、服飾もしくは室内装飾に係るデザイン、商品開発その他これらに類似する業務に従事すること。
ロ 従事しようとする業務に関連する業務について3年以上の実務経験を有すること。ただし、大学を卒業した者が翻訳、通訳または語学の指導に係る業務に従事する場合は、この限りでない。
日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること。

非常に長くて分かりにくいので、嚙み砕くと以下のようになります。

以下の①②③すべてに該当すること。
自然科学もしくは人文科学の分野に属する技術もしくは知識を要する業務に従事する場合は、(1)~(3)のどれかに該当すること。
(1)自然科学・人文科学の分野に関する技術・知識に関連する科目を専攻して大学を卒業するか、それと同等以上の教育を受けている。
(2)自然科学・人文科学の分野に関する技術・知識に関連する科目を専攻して専門士の学位を取得できる日本の専門学校を修了したこと。
(3)10年以上の実務経験があること
外国の文化に基盤を有する思考または感受性を必要とする業務に従事しようとする場合は、(1)と(2)両方に該当すること。
(1)翻訳、通訳等の一定の業務に従事すること
(2)従事しようとする業務に関連する3年以上の実務経験があること。
③外国籍人材が受け取る報酬額は、日本人と同等以上であること。

①と②は場合分けなので、①に該当する業務を行う場合は①と③、②に該当する業務を行う場合は②と③の基準に該当している必要があります。

技術・人文知識・国際業務の上陸許可基準に関するさらに詳しい解説は、こちらをご覧ください。

現在の在留資格に該当する活動を行っていたこと

申請人である外国人が、それまでの在留期間中に、現在の在留資格に応じた活動を行っていたことが次の審査ポイントです。
要するに、これから行おうとしている活動内容が在留資格該当性を満たしていることも必要だし、これまで行ってきた活動内容も在留資格該当性を満たしていることが必要です。

素行が不良でないこと

素行が不良でないこと、は平たく言えば日本の法律を遵守していることを表します。
たとえば、外国人の退去強制事由である、刑事処分を受けたことなどは、素行が不良であると判断されます。

また、技術・人文知識・国際業務の在留資格を持った外国人が、事前に許可を得ることなく技術・人文知識・国際業務の在留資格の範囲外の活動で報酬を得るようなことがあれば(資格外活動違反)、それも退去強制事由に該当し、素行が不良であると判断されます。

独立して生計をことができる資産や技能があること

入管は、在留外国人が日本にとって経済的に負担になることを嫌い、危惧しています。
したがって、日常生活で公共のとならず、保有する資産や自身の技能で将来的に安定した生活が見込めることを審査しています。
ただ、仮に公共の負担(たとえば生活保護を受給している等)になっている場合であっても、在留を認めるべき人道上の理由などがあれば、そうした理由も加味して判断されることになります。

技術・人文知識・国際業務の場合は、上陸許可基準を満たしていれば一定の技能を有していると認められます。

雇用・労働条件が適正であること

アルバイトを含めて、全ての雇用・労働条件が労働関係法令に違反していないことが必要です。
特に、最低賃金については違反しやすいので、注意が必要です。

通常労働関係法令違反については申請人である外国人側に責任はないので、こうした事情を加味した上で審査が行われます。

納税義務を履行していること

昨今厳しくなっているのが、この納税義務に関してです。
一般的な外国人になじみのある税金は、住民税、所得税、健康保険、年金です。
しかし、サラリーマンとして働いている場合には、住民税は特別徴収、所得税は源泉徴収、健康保険や厚生年金も給与天引きされて、会社が半額を負担した上で納めているはずなので、あまり心配することはありません。

いわゆるフリーランスなどで、自分で確定申告をするような方については、納税義務をきちんと果たしているか、よくよく確認してください。

なお、永住許可申請をする際には特に厳しくチェックされるため、将来的に永住許可申請を検討している場合は、1日たりとも納付遅れが発生しないように十分注意してください。

入管法上の届け出義務などを履行していること

入管法では、在留外国人に対して様々な義務を課しています。
その義務の中でも、各種届出があります。

この記事の最初でも触れた、所属機関等に関する届出もその1つです。
その他にも、在留カードの記載内容が変わった際の変更届や、引っ越しをした際の住所の書換えなどもあります。

こうした義務の履行について、本記事執筆時点ではあまり細かく指摘されないことの方が多いですが、今後はこのような届け出義務についてもかなり厳格に審査対象となることが考えられるため、届出等の抜け漏れが無いように気を付けましょう。


外国人の在留資格手続で、お困りのことはございませんか?

行政書士TLA観光法務オフィスでは、在留資格手続の専門事務所として、過去の知見からお客様の状況に合わせた様々なアドバイスをすることが可能です。

転職直後の在留期間更新許可申請について、事情変更なしの単純更新だと思って手続を進めると、実は他にも資料が必要だった、ということが良くあります。
そして、本記事で解説したような内容をうまく理解できずにそのまま進めてしまい、残念ながら不許可になってしまったという事例は本当に多くご相談いただきます。

ぜひ、不許可になる前に、しっかりと専門家にご相談いただき、ご本人の状況や会社の状況を正確に踏まえて、申請を進めていただきたいと考えております。

もし、在留資格のことでお悩みを抱えていらっしゃる場合は、ぜひ一度私どもにお話をお聞かせください。
ご相談は、下記お問い合わせフォームから受け付けています。
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